ポケットコロッケ解散が示す「好きなこと」を仕事にする覚悟

人物

お笑いコンビの解散報告というのは、正直言って「またか」と思ってしまうことも多いです。事務所の意向、活動休止からのフェードアウト、なんとなく察してしまう空気感——そういうパターンを何度も見てきたからです。

でも今回の「ポケットコロッケ」解散は、少し違いました。

理由を包み隠さず、しかも箇条書きで公開してしまうという潔さ。そこに笑いと切なさが同居していて、思わず二度見してしまった人も多いのではないでしょうか。

「結果が出ない7年間」に耐えられる人なんて、そういない

相方の一人、相川しゅんすけさんは、再結成後の3年半について「全く結果が出ないながらなんとか頑張って来た」という趣旨のことを綴っています。もう一人のたく真さんはもっと直接的に、「7年信じられないくらいなにひとつ結果が出ない」と明かしています 。

これ、冷静に考えるとものすごく重い話です。

好きなことを仕事にする、というのは聞こえはいいですが、実際には「好きなことのために生活のほとんどを犠牲にし続ける」という行為でもあります。しかもゴールが見えません。結果が出るかどうかは誰にも保証できないし、努力量と成果が比例するとも限らない世界です。

ポケットコロッケの場合、M-1グランプリでは2019年の2回戦進出が最高成績で、その後は長年結果を出せずにいました 。この事実が、2人の中で大きな重荷になっていたことは想像に難くありません。

だからこそ、「ついに燃料が底を尽きる時が来てしまいました」という相川さんの表現がしっくりきます 。これは怠慢でも裏切りでもなく、単純にエネルギーが物理的に切れてしまった、という話なのです。

解散理由に「生活習慣の不一致」が混ざる、このリアルさ

今回の解散理由リストで一番話題になったのは、おそらくたく真さんが公開した5つの理由のうち、後半の2つでしょう 。

  • 暑いと思う気温と寒いと思う気温が合わない
  • 家のトイレで立っておしっこするたく真さんと、座っておしっこする相川さん

正直、笑ってしまった人は多いはずです。でもよく考えると、これはめちゃくちゃ本質的なことです。

コンビ活動というのは、家族でも恋人でもない他人と、何年も密な時間を共有し続ける関係性です。売れていない時期であればあるほど、移動や待ち時間、稽古場での時間など、一緒にいる時間は長くなります。そんな中で「小さな違和感」が積み重なっていくのは、むしろ自然なことなのかもしれません。

活動が順調で忙しければ気にならなかったかもしれない些細な違いも、結果が出ない停滞期には妙に大きく感じられる——これは芸人に限らず、どんな人間関係にも当てはまる話ではないでしょうか。

「不仲」ではなく「限界」という言葉のほうが近い

一部ではこの解散を「不仲説」として捉える声もありますが、公開された理由を並べてみると、これは憎しみや対立というより、「噛み合わなさの蓄積」に近いのです。

「お互いの良いところをお互いで潰しあってしまっている」という表現も、悪意があるというより、単純に相性の問題として読めます 。

そして何より、当人たちが前向きな言葉で締めくくっているのが印象的です。

  • 相川さん:「2人の今後を考えての解散なので前向きな決断」
  • たく真さん:「また別の形で一緒に仕事ができたら良いなと思ってます」

感情的な決別というより、「もう十分やり切った」という納得の上での区切りに見えます。

結果が出ない時間をどう乗り越えるか、というテーマ

この一件が多くの人の共感を呼んでいるのは、芸人という職業に限った話ではないからです。

副業、転職活動、資格試験、クリエイティブな挑戦——結果がすぐに出ない努力を続けている人は世の中にたくさんいます。そういう人たちにとって、「7年間結果が出なかった」という率直な告白は、他人事ではないはずです。

頑張り続けることが必ずしも正解とは限りませんし、区切りをつける決断もまた、立派な選択のひとつです。今回の解散劇は、そのことをどこか優しく教えてくれているような気がします。

10月5日、最後のステージへ

2人がXで明かしたところによると、コンビとしての最後のライブは10月5日を予定しているそうです 。

その日、2人がどんな空気でステージに立つのでしょうか。そして解散後、それぞれがどんな道を歩んでいくのでしょうか。

「好きなこと」を仕事にする覚悟とは何か。そして、その「好きなこと」に区切りをつける覚悟とは何か。

ポケットコロッケの7年は、その問いを私たちに突きつけています。

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